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2019年8月11日 (日)

アニメ映画「天気の子」の感想と批評。書いておくかー

Tenkinoko
 
アニメ映画『天気の子』が放映されてしばらくしたので、
ちょっくら感想と批評を書いておくことにします。

興行収入約250億、日本映画で歴代2位の『君の名は。』の次回作です。
さぞかし期待する人は多いでしょう。
まぁ、自分は新海誠監督はどこでどういう方向へ行くか分からない人だと思ってるので、そういう所も楽しみにしてますけど。

※ちなみに、これまでの新海誠さんの作品の感想も書いてます ⇒ 

一応、物語で肝心な所はぼかして感想を書くようにしますが、
まだ観てない人が読むのは非推奨とします。


















・・・とはいったものの、
前作ほどのインパクトは無かったので、
なにから書こう?
とりあえず、率直な面白さについてから。

「率直な面白さ」の感想を言うと、
前作の『君の名は。』は、
「すごい面白かった!!!」「観ててスッキリした良い気分になれた!!!」「内容も濃いし情報も多いし、一回視聴じゃ足りない!」ということで3回劇場に行くはめになったんですが、
それで言うと今作はだいぶ劣るのは確かだと言えます。
特に「観ててスッキリした良い気分になれた!!!」は無かった気がする・・・
個人的には、観た後のスッキリ感で言ったら、アニメ映画『ペンギン・ハイウェイ』にも劣るぐらいの感触かもしれません。

新海誠作品のNo.2といったら、『秒速5センチメートル』が不動の地位になるんだろうか……


 
そんな感じで今作は、「そこでこう来るのか!」「このネタを使うのか!」みたいな楽しみはありましたけど、
ちょっと素直に楽しめた感は少なかったかもしれません。
考察的な見方をし過ぎた自分も悪かったんですが、そんな感想となりました。

どっちかというと、素直な「面白かった。」というより、
「新海誠がやらかしてくれて嬉しかった。」という感想の方が近いです。
あと、テーマを噛みしめることで出てくる面白さとかがあると思いました。
 
 
■個人的に楽しめたオカルトネタなど

とりあえず、オカルトネタが豊富だったのが好きでした。
前作でも、オカルト雑誌『ムー』はちょっと出てきましたけど、
今作はもっと直球で来ましたね。

あと、龍神系の人と稲荷神系の人の話とか。もっと聞きたかった(笑)

それから、今回のメインテーマは天気の巫女の話だったりとか、
空には生き物がいるみたいな神秘の話とか、
人の心は空に影響される話とか、
天気と意識のリンク具合とか。
この辺は物語の核心の辺りだろうと思います。

こうした「空の神秘」を噛みしめていく楽しみもありましたね。

 
■「セカイ系」というジャンルとしての『天気の子』

『天気の子』の内容を語るにおいて、
「セカイ系」というジャンルについては外せません。

「セカイ系」とは、2000年代前半ぐらいからいつの間にか流行っていった言葉で、オタクの間で有名なジャンルとされているものです。
Wikipediaによる簡単な説明だと、「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと」
・・・と言われています。

◆セカイ系 - Wikipedia

発祥については諸説ありますが、
影響が一番大きいのは、あの『新世紀エヴァンゲリオン』と言われています。
他にも、『涼宮ハルヒの憂鬱』といった、アニメ史に残る有名作品において見られます。

そして、新海誠さんも、そんなセカイ系のジャンルのものを見事に作っている人で、
その代表作として『雲の向こう、約束の場所』があります。



先ほど、新海誠作品のNo.2といったら『秒速5センチメートル』と書きましたが、個人的に好きな作品ということで好みで選んだらこっちかもしれません。

この作品もめちゃくちゃセカイ系な内容だし、さらに今作の『天気の子』と展開を比較してみると面白いです。

『雲の向こう、約束の場所』の主要キャラの役割もまた、今作との近さがある感じで、「子供っぽい主人公」「大人っぽい主人公」「ヒロイン」がメインキャラクターとして構成されています。
『天気の子』の場合、それぞれ
・「帆高=ヒロキ」
・「須賀さん=タクヤ」
・「陽菜=サユリ」
に対応していると言えます。

『雲の向こう、約束の場所』の印象的なシーンにあるのは、
主人公のヒロキが、親友のタクヤから以下の言葉を突きつけられる所。

サユリを救うのか、世界を救うのかだ


状況は大分違いますが、『天気の子』でも、同様に「決断」を突きつけられてるような所があります。

小説版の『天気の子』を読んでじっくり吟味して、
あらためて思ったのは、
この作品のテーマは「決断」がまたネックになっていることです。

主人公の帆高があの世界を選んだことについて、
色々と感慨深く、考えさせられる所は、
今回の作品で一番好きな所かもしれない、
と、小説版を読んであらためて思いました。

 
■こっからは変な話する

Twitterを見てて、
自分が好きな感想はこれ。

天気の子観ました。右の高校生カップルの女の子が「めっちゃ良かった。。。」って泣いてましたが、左のオタクっぽい二人組は「新海にしては微妙なところをついてきましたね」「これは慎重な討論が必要だわ」と言っていたのでよかった。
https://twitter.com/ntrmk_stone_s/status/1152179566359662592


ほんとに今回は「微妙なところついてきたな」という感じは、
『君の名は。』以前の新海誠の作品を思い浮かべると感じました。

そして、自分が興味深いと思った感想は、
『天気の子』のストーリーは、一時期流行った「エロゲーっぽい」とか言われてることです。

◆【ややネタバレ注意】「天気の子」を見てゼロ年代エロゲについて語りだす人々 - Togetter

まぁ、自分はそっち方向は疎いオタクなんで、
よく分からない所なんですが・・・

エロゲーというジャンル・・・
アニメ『Air』の劇場版をDVDで借りて、
試しに観てみたぐらいしか知らない・・・
(主題歌がやたらと良い。)
あの界隈、特出した作品がたまに出ているみたいな印象があります。
 


アニメ『Air』の主題歌。Youtubeのコメントからその人気ぶりがうかがえる。

 
『天気の子』のストーリー展開は、
「現実には起こらんやろ。」みたいに突っ込みたくなる所が多々あり、
・・・・いや、架空のストーリーってのは大体そういうものなんですけど・・・
なんなんでしょう、ずいぶんと都合よく進んでいく話に、
なんかモヤモヤっとする感じがありまして・・・
その正体は「エロゲーっぽいストーリー」と聞いて、
「あぁ、それかもしれない。」と、なんだか腑に落ちたような気がしました。

新海誠監督の経歴にあるのは、ファルコムというゲーム会社に勤めていたことです。
このファルコム自体は昔からある有名なゲーム会社で、
ここは決してエロゲーメーカーというわけではないんですが(笑)。
退職後にminoriというエロゲーブランドと協力してて、
新海誠さんの作った映像が使われてる作品があるのは、
詳しい人の間では有名な話。
新海誠監督がエロゲー(またはギャルゲー、またはビジュアルノベル文化)に影響されてても、
おかしくはないと噂されるというか、
元々「闇の住人」出身みたいに見てる古参ファンが多いです。
 


minori初参加となった作品。キャラが新海誠さんの手描きなのが分かる。

 
エロゲーの特徴として言えるのは、ストーリー進行の中に選択肢があることです。
ゲームなので、ストーリーを進めていくと分岐を選択するシーンがあって、どれを選択するかによってその後のストーリー展開も変わっていって、どのヒロインと結ばれるかも決まる……みたいな。
エロゲーに限らず、ゲーム中に選択肢があって、どれを選ぶかによってエンディングの内容が変わるというマルチエンディングシステムは、ビジュアルノベルゲームにおいてよくあります。

『天気の子』も、なんとなく「どう選択するか」を迫られるようなシーンが随所にあり、
選択次第ではもしかしたら別のエンディングがあるかもしれない………と思わせるような所が、ビジュアルノベル的です。

……うーん……。「新海誠はエロゲーの影響を受けた」と言うとイメージが悪いので、「ビジュアルノベルゲームの影響を受けた」と言ってあげた方が良いかもしれない(笑)
 

Erogebunpu  
各ジャンルの関係はこんな感じになると思います。

 
しかし、そんな「エロゲーっぽいストーリー」も、
ごく普通のカップルの女性とかには案外ウケが良いかもしれません。
そういう文化が一般大衆の所まで届くのは珍しいことです。

加えて、新海誠が好きなオカルトネタの盛り込みに、
新海誠特有の美しいグラフィック・・・
その辺が盛り込まれてるアニメ映画ということで、かなり珍しいことになってるのもこの作品の特徴ということになります。

 
■あらためて総評する

さて、この『天気の子』という作品が、なんで前作と比べるとイマイチだったのか、
あらためてもうちょっと考えてみましょう・・・

前作『君の名は。』が自分的に良いと思ったのは、
「ストーリー性」「神話ネタの盛り込み」が鮮やかだったことです。
ただ、今作の「ストーリー性」の劣りは、
先に述べた「エロゲーっぽさ」にちょっとあるかもしれず、
加えて、主人公とヒロインに共感しづらい点なども、物語の力としては弱いです。
(前作の瀧と三葉は、共感しやすい主人公として理想的だったと思う。)

あと、「神話ネタの盛り込み」について。
前作の『君の名は。』のピークは、三葉のお婆ちゃんが「ムスビ」について語るシーンで、
あのシーンから宮水神社ご神体への訪問にかけての所が鳥肌もので、
自分が一番好きなシーンなんですが・・・
今作もそれに近い神秘的なシーンはあれど、
鳥肌が立つほどの演出じゃなかった気がします。
その辺のパンチ力が弱かったので、これもまた、物語の力としては弱いと言えます。

その二点があるのに加えて、
『君の名は。』はスッキリな「ハッピーエンド」で締めくくったのに対し、
『天気の子』は「ハッピー・・・エンド・・・?」な締めくくりだったことが大きいです。
これは「観てて良い気分になれた!」になれない所なので、
単純な面白さに影響が出てしまうのは仕方がないでしょう。

あと、「雨演出」が多かったのも、大きな特徴と言えます。
こういう天候の多さが「全体の印象」として色濃く残ることになるし、
今作はそもそもの全体のテーマが「雨」ということにしてたのでしょう。
『君の名は。』は逆で、大体は「スッキリした快晴!」のシーンが多かったので、だから観た後に「スッキリした。」の感覚が大きかったのだと思います。
今作で言われてた通り、まさしく「天気が人の意識に及ぼす影響はとてつもなく大きい」ですね。

まぁしかし、これらの特徴に関しては、新海誠さんがこういうのをやりたかったってことなので自分は否定しません。
ぶっちゃけ人気よりもそっちを優先したってことでしょう。

小説版『天気の子』のあとがきで、新海誠はこう書いてました。

自分なりに心を決めたことがある。それは、「映画は学校の教科書ではない」ということだ。映画は(あるいは広くエンターテインメントは)正しかったり模範的だったりする必要はなく、むしろ教科書では語られないことを──例えば人に知られたら眉をひそめられてしまうような密やかな願いを──語るべきだと

 

そしてそんなふうに思い定めて本作を描くことは、実を言えばとても楽しかった。僕自身がわくわく出来る冒険だった。「老若男女が足を運ぶ夏休み映画にふさわしい品位を」的なことは、もう一切考えなかった。


もし、人気を優先するフツーの脚本家が映画を作ったら、
全体的にハッピーな結末を、どうにか理屈をつけて考える所でしょう。
そっちの方が絶対、老若男女はスッキリします。
しかし、今回それをやらなかったのが新海誠で、
「そりゃ、ここまでの信念が無かったらあの結末にはならんやろ。」
と、小説版のあとがきを読んでとても納得しました。

これはこれでクリエイターとしてあるべき姿なので、それで良いと思います。

 
以上、いろいろと書いていきましたが、
これからも新海誠のファンとして応援していきたいと思います。

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